よく晴れたある休日、家族で西海橋公園に行った。
人影まばらなのは、みんなが公園に繰り出すピークの時間帯から外れているからだろうか、それともまだ冷めやらぬこの夏の風のせいか。
今日この場所にやって来たのには明確な目的があった。それは子供の電位をアースしようというものだ。
いつか昔、現代の人間は常に不導体の上で生活しがちであり、体内の電位が0Vに落ちることがなく、それが体内で炎症を起こし、病気の原因になっているという内容の記事を見た。
その記事を見たときは「ふん、そんなバカな」と鼻で笑ったが、それ以降、機会があれば地面に素足をつけてアースを試みている、私はそういう男だ。
コロナ禍と長雨の影響でなかなかオンモに出してあげられない娘も、今日はしっかりとアースしてあげたい。
よく見ると午前中の地面はややしっとりと濡れていたが、この程度ならイケるとふんだ私はエイヤと娘を芝生の上に置いてみた。
娘のイマジナリー電位がみるみる下がっていくのを感じる。
しかし次の瞬間、娘が大泣きを始めてしまった。
すぐにヒョイと持ち上げるが、せっかくのアースなのだからともう一度芝生に下ろそうとするも、娘は泣きながら空中で足を折りたたみ、地面に接触しまいと必死の抵抗を見せる。
芝草のチクチクが不快であるに違いなかった。彼女も多分に漏れず現代っ子である。
芝生の上でハイハイしている娘の、オムツで膨れた尻と、振り返る楽しそうな表情を撮影するという密かな楽しみはこの時点で露と消えた。
もはやこれまでと娘を抱っこし、一緒に西海橋を見て公園をあとにした。
空はもう、少しずつ高くなりはじめていた。
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