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先日いつものようにツイッター(現X)を楽しんでいると、エジプトとヨルダンに政府が出資するという話を見て、「これだけのお金があれば国民をどれほど潤すことができるか」的なことを書いた人に対して「それは外貨準備から支出されているから、国民の生活とは無関係」的ないつものやりとりが繰り広げられていたため、とはいえ、どんな条件で貸しているのか全くわからんのだよな、と思って下記の引用投稿をしたのでした。
外貨準備高の話、大筋理解できるのだけど、政府がこの支援をどのくらいの期間、どのくらいの利率で貸してるのかってどこで見られるんだろう。
もし割の悪い投資だったり、無償で供与してたりした場合、円安が加速しちゃうですよね。 https://t.co/zL0oZdjSFO— 920 (@qunyoel) December 2, 2023
外貨準備とは以下の通りです。
外貨準備とは、通貨当局が為替介入に使用する資金であるほか、通貨危機等により、他国に対して外貨建て債務の返済が困難になった場合等に使用する準備資産です。
わが国では、財務省(外国為替資金特別会計)と日本銀行が外貨準備を保有しています。
要するに日本円にして200兆円近い米ドルのようなのですが、これを国内で使おうとすると日本円に換金する必要があります。
しかし大きなドル売りが発生してしまった場合、為替レートも大きく動いてしまって皆が迷惑被るので、基本的に国内向けにこのお金を使うことができないようです。
なので海外への融資などは遊んでいるこのお金を使ってなされているという話を前に見て、なるほどと感心したものでした。
しかし、自分の上記の投稿に対して下記のような返信が付きました。
えっっっ!
これが本当だとすれば、本当は国内問題に対して使えるお金を海外に渡していたことになり、国内の諸問題について「財源がない」と言って推進してこれなかったのは海外にお金渡しすぎてたからなんじゃないかという疑問が生じてしまいます。
これまで「はは…すごい金額海外に出資してるけど、どうせ国内では使えないお金だからな…」と納得してきた前提がぶっ壊れてしまうことになります。
ということでちょっと調べてみました。
結論から言うと、分からない
調べてみたんですが、結論から言うと、海外への出資金が税金を財源とした「一般会計」から出資されている事実は確認できましたが、逆に、外貨準備から出資されているという明確な証拠は見つかりませんでした。
外貨準備の使途について
外貨準備の使途については日経新聞によって、財務省出典としてグラフが公開されていました。
グラフ中「その他」以外は使途が定まっているため、海外への出資金が含まれるとしたら「その他」の中だろうと思われます。
この「その他」はだいたい5~10%くらいの割合だと思われますが、それでも外貨準備の総額が大きいのでおよそ1兆円くらいの規模になります。
さて、この外貨準備は以下のような流れで運用されているようです。

出典: 07.pdf
この中で海外政府に資金が流れそうな要素は・・・IMFと、国際協力銀行(JBIC)、かなと。
IMFは明確に日本政府とは主体が異なると思われるので、JBICについて調べました。
JBICは日本政府の100%持ち株会社
ほうほう、つまりJBICはほぼ日本政府内の機関だと言っても問題なさそうです。
ということは、海外の支援対象国への出資金は政府の命令によってJBICより拠出されているのかな?
そうであってくれ…!
と思いながら、それを裏付ける資料を探したのですが、見つけることができませんでした。
つまり、上で述べた通り「外貨準備から出資されているという明確な証拠は見つかりませんでした。」
でも、断片的に以下のような資料はありました。
「株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律」の施行について | JBIC 国際協力銀行
「株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律」の施行について | JBIC 国際協力銀行
上記URL内では、JBICがウクライナの借金を保証するということを言っています。
ただ、政府主導の海外国支援には触れられていません。
UPDATE1: 1月末の外貨準備高は1兆0929億ドル、債券安やJBIC貸付で3カ月連続減=財務省 | ロイター
UPDATE1: 1月末の外貨準備高は1兆0929億ドル、債券安やJBIC貸付で3カ月連続減=財務省 | ロイター
また上記では
外国為替資金特別会計(外為特会)から国際協力銀行(JBIC)に対して行った貸し付け39億ドルや、国際通貨基金(IMF)を経由してアイルランドへ約15億ドルの融資を実施した
とありますが、これは単にJBICに対して外貨準備から資金が流れたということを言っているにとどまり、このお金がどこに向かっているかということは明らかにされていません。
X上では、これを根拠にして外貨準備が政府主導の海外への融資に使われているという人もいましたが、根拠としては弱いと思います。
逆に一般会計から海外へ資金を拠出している証拠はあるわけで・・・
例えば、この資料は分かりやすい。
一般会計の表中に「二国間贈与」や「無償資金協力」と書いてあります。
ということで、海外への支援金には少なからず我々国民の生活を改善するために使えるお金が投じられているということはほぼ間違いないです。
そもそも外貨準備は海外支援への使い方が想定されていないっぽい
運用にあたっての法律などに関しては以下の通り
特別会計に関する法律 | e-Gov法令検索
もっと簡単なものは以下の通り
外国為替資金特別会計が保有する外貨資産に関する運用について : 財務省
なんですが、基本的に流動性の高い(必要があればすぐに現金化できる)運用しかできないって書いてあるので、文字通りに受け取れば海外への支援金としては使えないだろうなとは思います。
まとめ
ということで、一般会計から海外へ出資しているという証拠はありましたが、外貨準備を使って海外支援をしているという証拠は見つからなかったという結果になりました。
引き続き、外貨準備が海外支援に使われているという裏付けを探したいとは思っていますので、なにか見つかればここに追記したいと思います。
まあこれまで完全に海外支援には外貨準備が使われていると思い込んでいたので、今回キリリさんにご指摘いただいたのはとても良い機会になりました。
ありがとうございました。
最後に
なお、ODAにおける返済期限や金利などは対象国のレベルによって定められている様子ですね。。
Terms and Conditions of ODA Loans | What We Do - JICA
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