あれは娘が1歳半頃のことか、娘が最初に発した6文字の単語は「アンパンマン」だった。
それから時は流れ、もうじき娘は2歳になる。
時が経つにしたがって、私自身も「それいけ!アンパンマン」と向き合う時間が増えた。
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もともと、私自身は我が子がアンパンマンを好んでいるというシチュエーションは避けたかったのだと思う。
ひとたび家庭内へのアンパンマンの侵入を許せば家中がアンパンマンになってしまう、アンパンマングッズにはそのポテンシャルがあるし、我が子がアンパンマンと付き合うということはそういうことだと思っている。
しかし誰も、誰かの「好き」を止めることはできない。そして彼女のアンパンマンへの情熱は本物だった、正確に言えば最近ではバイキンマンが一番の推しとなった。
そうして私自身も人生で初めてアンパンマンと向き合うことになったわけだが、なかなかどうしてアンパンマンとは興味深い世界だった。
まず、主題歌の「アンパンマンのマーチ」について、歌い出しから「そうだうれしいんだ、生きるよろこび。たとえ胸の傷がいたんでも」とくる。
いきなり、そのお子様向けの作風には似つかわしくない影をちらつかせてくる。
それからも歌詞の中で哲学的な問答が繰り返されながらついには「愛と勇気だけが友達さ」とくる。
この部分の歌詞については私の周囲でも議論が紛糾したことがある。愛と勇気だけが友達だというのなら、アンパンマンにとってのカバオの存在はどうなるのか。
その答えを見つけるべく、我々は博多に向かった。
アンパンマンミュージアム
アンパンマンミュージアムは全国主要都市に存在し、九州では福岡、博多リバレインモール内にある。
地元色あふれるポスターを見つけて思わず撮影してしまった。たとえば大阪だとこれが「来んかい!」とかになるのか。
そしていよいよアンパンミュージアムの入場ゲートで入場料金を支払うわけだが、アンパンマンミュージアムでは1歳以上のお子様に対しては大人と同じ入場料1,800円をきっちり徴収してくる。
2歳前の子供は入場無料だろうとタカをくくっていた我々は、いきなりその出鼻をくじかれた形となった。
「それいけ!アンパンマン」の世界では誰も貨幣を用いることなく、みんなそれぞれ自分の得意料理をシェアして生活しているように見えるが、あの生活が成り立つのもこうしたアンパンマンミュージアムの集金力のおかげといえるだろう。私たち家族の入場料がカバオのおやつ代になるのであれば幸いである。
そんなことを思いながらアンパンマンミュージアムに入場するとすぐに、これからショーに出るアンパンマン一行と鉢合わせてしまった。
その途端、娘が体を震わせながら強く父にしがみついてきた。おそらくせいぜい自分よりちょっと大きいくらいだと思っていたアンパンマンらが、実際は父母よりも巨大だったことに肝を冷やしたか。
「オオキイ…」とまだ決して多くはない彼女のボキャブラリーの中から的確に言葉を選んで発していた。
満を持して始まったアンパンマンショーだったが、いまだ恐慌冷めやらぬ娘をケアしながら他の子どもたちよりも離れた場所で鑑賞することになった。
この日は平日だったにも関わらず、人が多かった。休みの日となると凄まじい人出になるのだろう。
そんなこんなで娘もいつしかアンパンマンたちの大きさに慣れ、食パンマンの旺盛なファンサービスにすっかり満足したようだった。
推しのバイキンマンにも会えて大喜び。
久しぶりに来た博多は都会でした。
近くの美容室?のオブジェ、でかい宇宙猫のインパクトもオオキイ。植木鉢の配置も相まって壁の中に召喚されたように見えた。
さすがの都会っぷり。
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愛と勇気だけが友達
アンパンマンミュージアムから家に帰ってきて、改めてこの歌詞について考えてみた。
これはつまるところ、相対する相手の内に己を見出したとき、もはやすべての外形や外観は空となり意味をなさず、あらゆる概念が愛と勇気という前向きな気持ちに還元され収束してしまう。
そういうことだと思いました。
そういう、結論を得ました。
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本日もG線上のきりんにお越しいただき、どうもありがとうございました。
秋の風情ゆたかな紅葉と曇り空を望む自室にて。
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