先日ブラックベリーの種を噛んでいたら、突然奥歯に稲妻が落ちたような痛みがはしった。
(まさか、虫歯になっちまったのか…)
ごきげんな道をドライブ中、突如現れた警官に脇道へ誘導された時の様な冷や汗が、背中を伝った。
おそるおそる痛みが走った部分を触ってみる
「コリ…ガサ…コリ…」
コリ…ガサ…コリ…?
なにこの音、怖い…
と思いながらつづけて触っているとポロっと何かがとれた。
ワワー!と思ってとれた物を見たら、完全に自分の歯でした。
永久歯に生えかわって以来これまで、本当にありがとうございました。
冗談はさておき、自分の歯が突然ポロっと欠けたので凄くあせったのだった。
以前虫歯の治療をした部分が弱っていたらしい…。
欠けた自分の歯を見つめて、そこから漂う、なんだか取り返しのつかないことになった感にしばらく呆然としていたが、舌先で欠けた歯の部分をなで回してみて、はじめて事の重大さにきづいた。
すごく、とがってる!!
「古代人の暮らし」などで展示してある黒曜石の”やじり”をイメージしてもらうとわかりやすいと思いますが、欠けかたが悪かったようで、かなしくも鋭くとがった奥歯が出来上がってしまっていたのでありました。
べろを動かすと、べろの根本を無慈悲に切りつけてくる己の奥歯のあまりのトゲトゲしさを、口内でベロを縦にする事でなんとか凌いではみたが・・・本当の地獄はこれからだった。
「いたっ!うまっ!いたっ!」
食事がまともにできない。
こんな事になってからはじめて気づいたのだけど、食事中、ベロはかなり無意識にダイナミックな動きをするのだった。
この日はちゃんぽんだったのだけれど、口の中ほうぼうに散らばった麺たちを、ベロがまとめあげるような動きをする時、ベロの根本はかならず鋭利な歯に触れてしまうのだ。
これは完全に意識の外のことであり
「もうやめて!これ以上麺をベロでまとめあげるのは!」
と強く念じながら慎重にベロの動きに注意を払っていても、あるタイミングでゾリっと嫌な感触とともに、するどい痛みがベロの根本を襲うのだった。
こんな事を繰りかえしているうちにすっかり食欲はなくなり、ちゃんぽんは大量に残しつつ、しょんぼりとリンガーハットを後にした。
ヨタヨタと家にたどり着いた私は、すぐにベッドにもぐりこみ、もう歯医者さんの開店時間まで寝てすごす事にしようと思った。
翌日、急すぎて診察の時間がないとしぶる歯医者さんに対し、自分がどれほどに辛いのか、せめて歯の尖りだけでも何とかしてほしい事を伝え、強引に予約をとりつける事に成功し、どうにか事なきを得た。
治療が終わって自由に動かせる舌に感動した私は、深い感謝の気持ちをこめて、ミスタードーナツを歯科医院の皆さんにプレゼントした。こういう事は大事だ。
そして思ったのだった。
まだ人間がウホウホ言っていた時代だったならば、オレはひょっとすると死んでいたかもしれんな。と。
調べると縄文時代の平均年齢は14.6歳で、最高でも31歳くらいの寿命だったらしい。こんなささいな理由で死んだ人間も間違いなくいたはずである。
現代の医療に感謝するとともに、34年間も連続稼動していると、歯が突然欠けてしまうような事もあるのだなあと、改めて中年のこの身のメンテナンスの大切さを再確認したのでした。
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