レビュー

ヒトの心の探求を助ける名著「嫌われる勇気」と「幸せになる勇気」

嫌われる勇気は以前にも読んだ事があるのだけれど、先日贈り物として人に渡す際にどういう内容だったかをもう一度確認するべく、Kindleに入っている電子版を読み直してみました。すると初めて読んだ時以上に衝撃を受けたので皆さんにもおすすめしたいなあとの思いに至ったのでした。

いやホントこれ10年に一度レベルの良書なんじゃない?と感じたのです。

嫌われる勇気

今から80年前に亡くなった「アルフレッド・アドラー」という人が提唱した心理学「アドラー心理学」について、ある一人の哲学者と、その人を尋ねた青年の対話形式で書かれています。

この青年のキャラクターが僕はとても好きでですね。
アドラーの提唱する理論に、もろに図星を突かれて内心をえぐられまくるこの青年は、哲学者に対して「このサディスト!」とか「毒虫めが!」と毒を吐くんですが、哲学者がきちんと説明するとしっかりと理解してまとめ発言をしてくれるという、大変有能な男です。

目的から考える、人間の心理

夜寝る時に、電気を消すと途端に泣き出してしまう子供が居るとします。
一般的には、この子供は暗闇が怖いのだ、暗闇が原因で泣くのだと推察するかも知れません。

これに対してアドラーさんは、原因など本質的には存在せず、今現在からの目的の為に人は行動をとるという、いわゆる目的志向とでも言うような人間の心理を提唱しています。

さて、この子供の場合、泣き声を聞いて母親がそばにかけよって行くとすぐに泣き止みました。お母さんが「どうして電気を消すとあなたは泣くの?」と尋ね、子供は「だって真っ暗になって怖かったから」と答えました。
お母さんは呆れ顔で「それで、お母さんが近くに来たら少しは明るくなったの?」とため息混じりに言うわけです。

目的志向で考えた時、子供は真っ暗になる事が怖かった訳ではなく、お母さんの注意を自分に向けさせる為に泣いていたと推察します。人間は例え幼児であっても、果たしたい目的の為に、必要に応じて感情を自分で選び出して使っているのだとアドラーさんは考えていたようです。

叱るも怒るも一緒

よく「怒るのは感情に任せているからダメで、叱るのは相手の為を思って理性的であるからOK」みたいな解釈がありますが、アドラー心理学的に言うと、どちらも縦の立場を利用した高圧的な接し方であるためにアウトという事になります。

アドラーさんは縦の立場を徹底的に認めず、あくまで人はみな横並びであるという事を提唱しています。まあ現代的には当たり前と言えば当たり前でしょうか?

例えば僕が感心した、こんな解釈

よく子供が「◯◯してもいい?」とか聞くと思います。
この時に大人は「いいよ」とか「ダメだよ」とか言っちゃいかんというのです。
この「いいよ」「ダメだよ」という返答は、子供の「自分で判断する勇気」をくじく事に繋がるというのですね。

従ってアドラー的にこの問いに答えるとするならば「自分で考えていいんだよ」という事になります。その後、子供がどちらを選べばよいかという事を考えはじめてから、大人はその判断を下す為に必要な条件などを教えてあげれば良いというスタンスなのですね。
これはなんだかかなり、目からウロコだなーと思ったのでした。

ともすれば「子供は自分で判断できないのだから、安全の為に大人が判断してあげるべき」って思いがちですもんね。

でも、子供というのは知識や経験がないから、つまり判断に必要な情報がないから判断に迷うだけで、思考能力自体は大人と変わらないくらい備わっているとアドラーさんは見なしているのかな。

まあ例え、考える力自体が大人と同程度ではないにしても、子供にとっての貴重な「考える機会」というものを奪ってしまうのは、長い目で見ると子供の為にはならないというのは理解できますね。

教育に携わる人には是非読んでもらいたい

叱って伸ばすよりも、褒めて伸ばすのが素晴らしい、みたいな話を聞いた事がある人は多いと思いますが、アドラーさんに言わせるとそのどちらもがよろしくないらしいんですよね。
僕も子供は褒めて伸ばすのがいいだろうと思っていたクチだったのでこれには驚いたのですが・・・。

なぜ褒める事が良くないのか。
端的に言うと、子供が褒められる事を目的にし始めるからだと言います。

別にいいじゃんって感じなんですが、褒められる事が目的になってしまうと、例えその子が良いことをしたとしても、褒められなければやる価値がないというライフスタイルになってしまうと。

そして他人からの褒め言葉、承認を求め続ける事で、その子供は自分の人生を生きられなくなってしまうといいます。

この概念が「嫌われる勇気」という言葉につながります。

他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを怖れず、承認されないかもしれないというコストを支払わないかぎり、自分の生き方を貫くことはできない

人から褒められる事が目的化する事は、やがて「競争」につながってしまうんですねー。そして競争とは、周りの人間は敵だとするライフスタイルとなります。
だいぶ端折ってしまったのですが、本書ではそうなる筋道が理路整然と述べられているので、詳しく知りたい方は是非読んでみてください。

ここに書いている事以外でも面白い考え方がたくさん述べられています。

本日もG線上のきりんにおこしいただきありがとうございます。

アドラー心理学では、全ての悩みは人間関係によるものだと言っています。
もしも宇宙で始めからたった一人であったとすれば、孤独や劣等感をはじめとする様々なコンプレックスに悩まされる事が、そもそも不可能だからです。

そして全ての悩みが人間関係であるとするならば、全ての喜びもまた、人間関係によるものだと。

覚えておいてください。われわれに与えられた時間は、有限なものです。そして時間が有限である以上、すべての対人関係は「別れ」を前提に成り立っています。ニヒリズムの言葉ではなく、現実としてわれわれは、別れるために出会うのです。
だとすれば、われわれにできることはひとつでしょう。すべての出会いとすべての対人関係において、ただひたすら「最良の別れ」に向けた不断の努力を傾ける。それだけです。

嫌われる勇気、幸せになる勇気、どちらも最高におすすめできる、素晴らしい著作です。

 

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