先日、妻の実家で義弟を待ってゴロゴロしていると、義妹が「かぐや姫の物語」を借りてきたという事で見せてもらいました。
ストーリーは昔みた「竹取物語」ほとんどそのまんまなのですが、その全編筆で描かれているような画風は懐かしくも斬新な感じで、すぐに見入ってしまいました。
僕自身の総評としては、日本アニメーションの中でも屈指の傑作だと思います。
原作の竹取物語は日本最古の物語であるという説もあり、9世紀後半から10世紀前半頃に書かれたものであるらしいです。この時代は歴史区分としては平安時代にあたりますね。
どのくらい平安時代の考証がなされているかは、知るよしもないのですが、ぼくのイメージする竹取物語、平安時代の感じとよくマッチしていて興味深かったです。細かい部分にかなり気を使って描かれているなと思いました。
日本的エッセンスが濃厚であるという意味でも、この作品の文化的価値の高さを感じます。
加えてこの作品の音楽は例によって久石譲氏が作られています。
作中の音楽は主張のない感じで、特になんとも思って居なかったのですが、最後の最後にかかる曲は静かに圧倒的でした。
ここからはネタバレになります。
まあ竹取物語の事知らない人は居ないかとも思いますが・・・。
僕の感じた「かぐや姫の罪と罰」とは
かぐや姫はもともと月の世界の住人で、その世界には一切の苦しみがないようで、いわゆる天国みたいな所なわけですね。
そんな幸せな世界に住んでいながら、ある日地球を思い出して涙する天の民を見て、地球に憧れを抱いてしまったかぐや姫は、その罰として地球に落とされてしまうのでした。
おそらく、仏教的思想が多分に入っているのでしょうね。地球に住まう人々は皆、悟りを得る事の出来ていない俗人だらけであり、月に住んでいる人々というのは悟りの境地に入った人々であるという事なんでしょう。
本来何物にも執着してはいけない悟りを開いたはずの人が、地球に執着してしまった事が罪だったという事かなー?
そして地球に落とされたかぐや姫は地球に生きる苦しみを目一杯味わう事になります。
かぐや姫の事を愛してやまない育ての親の翁(おきな)は、身分の高い人間に嫁ぐことが姫の幸せと信じて疑う事をしませんが、姫の本当に求めている事を理解する事ができません。
悪気が全くないので、姫も翁がそれで満足なら・・・という事で自分を犠牲にし始めます。
そんなこんなでどんどん抑圧されてゆく姫はどんどん不幸になってゆくという。
それもこれも全て月世界の住人から仕組まれた事だったのかは不明ですが・・・。
そして最終的に姫は「もうこれ以上ここに居たくない」と強く願ってしまいます。
その事がトリガーになり、月世界の住人は彼女を月に取り戻そうと地球へやってきます。
その時に初めて姫は気づくのです。この不安定で不自由な世界こそ自分が憧れて止まなかったものだと。
こうしてかぐや姫に対する最期の罰が執行されます。
人間の抱える葛藤や苦しみや悲しみに対し、なんの同情もなく、ただただ朗らかにあっけらかんと目的を遂行してゆく天上人達の無機質さに死の匂いを感じるとともに、ただただ泣き悲しむしか出来ない人間達にもののあわれを感じたのでした。
この映画を通して僕が受け取ったメッセージは「人生は金や地位名誉じゃないぜ。情熱のままに生きろよ!」でした。
本日もG線上のきりんにおこしいただきありがとうございます。
天上人を迎え撃つ兵士たちの放つ矢がすべて草花に変わってしまうシーンが、特に印象的でした。その時の音楽がとても良いのですが、映画の中で見てもらいたいと思うのでここにはリンクを貼らずに置こうと思います。
めちゃくちゃ切ない話なのですが、日本人の精神性のルーツを感じるお話でした。
一語であらわすならば「儚さ」かな。
更新情報をお届けします
この記事へのコメントはありません。