世間話

稼げないクリエイター業界をとりまく事情などについて考えてみた

先日ネットで流れてきた定食屋の話が興味深く

そこのお店は500円でバイキングが食べられるのですが、毎月10万円の赤字を出しているとのこと。
女将さんは96歳で、赤字の補填は年金によって埋められているようでした。
更に子どもには大きく育ってほしいとの願いからでしょうか、小学6年生以下の子どもは無料らしいです。

いい話ですね…。

と我々消費者サイドは思いがちですが、多分、近所の同業者の人はたまらんのではないかなあと。

このおばあちゃんが採算度外視でお店をやるせいで、普通の価格を設定して利益を出さなければいけない飲食店のお客さんが減ってしまう可能性があるわけですね。

お金が取れないクリエイター業界

似たようなことは多分クリエイターの業界にも起こっていまして、先日DJ界の人のこんなツイートがタイムラインに回ってきました。

このことについて、あーわかるわかる、って思ってしまって。

自分がまだ町のクラブに遊びに行っていたころは、DJは1〜2枚のドリンク券で出演したりと、ほとんどノーギャラみたいな感じでやってたと思うんですけど、それでもDJは集まるし「DJをやりたい人」と「DJがほしいお店側」という需給が成り立っていたので、それで問題なかったわけです。多分今も変わってないのでは。

しかしまあ地域全体で「DJはほぼタダで依頼するものであり、お金を払うものではない」という土壌が形成されてしまっていると思います。

これって全国的な状況なのかな?

原因は生活が豊かになってみんな暇だから

で、なんでこんなことが起こってるかっていうと、やっぱり世の中のデジタル化とかインターネットの普及とかもそうなんですけど、一番の原因は社会全体が豊かになったということだと思うんですね。

何しろみんな食い物に困ってはいませんし、そうなってくると暇をつぶしたくなると思うんですけど、渡りに船的に周りには自己表現をするためのツールが安くで売ってあるので、それらを使って暇を潰しはじめると、一億総クリエイター時代が出来上がりというわけです。

結果、供給過多になったコンテンツは安売りされてしまうことになり、デジタル化著しい業界はとくにその影響を受けることになります。

そしてクリエイターの分母としての数が増えることによって、自然に全体のクオリティも上がります。

特にツイッターのタイムラインに流れてくる絵を見てると、ここ数年の絵描き界のレベルの上昇凄まじいなあと。

暇つぶしに描かれている絵が、もはやプロなみなんですよね。

多分音楽とか写真とか映像とか、特にそういったデジタル機材で作られる視聴覚にまつわるものは、もうほとんどプロとアマの境界線が溶けゆきつつあるのかなと。

で、アマチュアの人になら安くで頼めちゃうので、友達同士で音楽や写真やイラストを安くで回し合う結果、更にコンテンツの相場は下がってゆくと。

おそらくこの流れは今後もますます加速していくのでしょう。

だからもう、友達どうしの本業じゃない仕事については、お金取ろうとか思わないほうがいいんじゃないかなって最近は思います。

必要なときにお互いが助け合える環境を作っておいたほうがいいのかなと。

もちろん、程度にもよると思いますし、べつにそこに金が介在しても全然いいと思うんですが、多分その仕事で金取るって言ったら、他の人がタダでやりますよっていう。

お金よりも信用を貯めろとかっていうのも胡散臭い

余談になりますが

最近では「いまはお金よりも信用が大事な貯信時代で評価経済の幕開けだ」なんていう風潮があって、上で書いていることもはからずもそういう文脈になってしまっているわけですが、これもはっきり言って胡散臭いなあと。

そもそも評価経済って結局は資本主義の土台の上にあって、信用経済の下位互換だと思うんですね。

クラウドファンディングによって信用をいつでもカネに換えることができるから、信用あつめたほうがいい!って、それって結局カネすごいって言ってんじゃんっていう。

なんも新しくないというか、まあインターネットが発達することによって個人の影響力が増幅したということが言いたいのだろうということはわかります。

そんでまあ実際にお金っていうのはすごく便利なんですよね。

かつては数値化できなかった信用というものまで、その尺度の内に収めてしまうことができるようになったわけで、お金の力というのは日々強力になってきているのだなあと。

デジタル化と相性がいいんでしょうね。

んで、この流れは資本主義というパワフルな仕組みが回っている間はおそらく止めようがありません。

私達が眠い目をこすってお金のために(ひいては家族を守るために)仕事にむかう限り、お金はその力を増していくでしょう。

だからそういうお金最強みたいな風潮に歯止めをかけるためにも、ベーシックインカムみたいな施策は役に立つんじゃないかなーなんて思います。

アナログ回帰について

ちなみに「デジタル化するから価値が下がるんだ、アナログに回帰しよう」なんていう動きもありますが、趣味としては結構かもしれませんが、メインストリームにはなりえないと思います。

アナログの良さというものがわかる人のほうが世の中には実際的に少ないからです。

アナログレコードは確かに最も豊かに音を含んだ媒体かもしれませんが、物理的なサイズや再生する手間を考えると、大多数の人がCDを選んだ結果が現在でありますし、デジタルも今後データ的密度を増すと、アナログとの境界が曖昧化していきます。

それに宣伝、周知がむずかしい。
インターネットに乗せた時点でもうデジタルになっちゃうので。

なので、アナログを求める声というのは長期的に見ると減少してゆくだろうなーと。

後発は新しいことしたほうがよさそう

とまあ色々考えた結果、結局新しいことをやるしかないんだなあということを思います。

既存の枠組みというものは、それを確立した人がすでに存在するということで、その中でトップを穫る、トップを維持するというのは、これは大変なことだよなあと。

なのでなにかのトップになれなさそうな人は、なにかとなにかを掛け合わせるとか、まったく新しいものを生み出すとか、なにかしら世の中にまだないものを作り出すことに注力したほうが労力的に割がいいんじゃないかなと思うのです。

目新しいというのは、それだけで価値だったりしますからね。

しばらく時間が経ってみんなが冷静になって社会的な価値が算定されてしまうまでは。

まあ長々語ってきましたが、じつはどの時代のクリエイターも立場は同じなんでしょうね。

インターネットとかデジタル化とか関係なく、本当に偉大なクリエイターはひとつのジャンルを作るひとなのでしょう。

あら、身も蓋もないなこれ

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