写真を人に見せると、よく「目で見るよりも綺麗に見えるね。」とおっしゃる人がいます。
これが真実かどうかというと、半分当たりで半分はずれです。
僕としてはこの言葉は褒め言葉と受け止めていますので、ありがたく感じていますが。
瞬間を撮影する力はカメラが圧倒的
まず、カメラが人間よりも優れている点は、ある一瞬の景色を正確に取得できる部分です。
良いカメラになると1/8000秒(0.000125秒)の瞬間を切り抜く事ができます。
普段目にするあらゆる物が、ほぼ静止する世界です。
それぞれ作例を見てみましょう。
滝は1.3秒間、シャッターを開いて撮影していますので、このように水の流れが絹糸のように表現されます。
人間が主体となっているようなスポーツはおおよそ1/1000程度のシャッタースピードであれば、ばっちり止まります。
動力を使ったスポーツに関してはこの限りではないです。
普段は繋がって見える噴水の、噴き上げられた水も1/3200秒の目で見てみると、一つ一つ水滴の形をしている事が確認できます。
と、言った風に、人間の目では普段見えない世界が見えます。
この点ではカメラは人間の目よりも優れていると言えます。
ただし明暗差のある所では人間の目が圧倒的です
例えばこの写真
海や空は詳細が見えますが、人は黒つぶれして写りません。
なので明るさを上げてみました。
これで人がどんな色の水着を着ているのかはわかりましたが、海や空は真っ白になってしまいました。
上記の結果からバランスよく現像したのがこの写真です。
つまり、カメラは明るい物と暗い物を人間の目で見るように同時に見る事ができません。
この事を専門用語で「ダイナミックレンジが狭い」と言うんですが。
よく写真家がモデルさんを撮影するときに、白い板を掲げているシーンを見たことがある人は多いと思います。
あれはレフ板と呼ばれるものなんですが。
人を撮影する時にレフ板を使って、人間に環境光をより多く当てる事によって背景との明暗差をなくそうとしてるんですね。
これによって、白飛び、黒つぶれの少ない写真を得ようという事なんです。
撮影現場での光源の設定や、撮影後の現像作業時に、白飛び黒つぶれを救済して、少しでも人間のイメージに近い写真を世に送ろうというのが写真家の重要な仕事の1つです。
普通の人が撮る写真と大きな違いが出る部分です。
とても気を使う作業なんですよ。
でもビデオカメラは明暗差、結構綺麗に出ますよね
ビデオカメラの場合は、大雑把にいうとカメラの連写で一連のシーンを撮るような仕組みですので、1つ前のフレーム(コマ)がどの程度の明暗差があるかをコンピューターで解析して、次のフレームの撮影にフィードバックしているんでしょうね。
どの程度オートで可変なのか、僕はビデオカメラをあまり使わないのでわからないですが、この機能はもろにコンピューター技術の成長を基盤にするものなので、加速度的に性能が上がっていると考えられます。
また、僕が個人的に思うのが、iPhoneって物凄く空の青と人物を写すのが上手いなあと思っていたんですが、これもビデオカメラと同じ仕組みを用いているんでしょうね。
最近のiPhoneは撮影した写真の少し前のムービーが見れるらしいんですが、この撮影前のムービーの情報を使って明るさをコントロールして明暗差をフラットにするアルゴリズムがあるんだと思います。
そしてそのデータ採りに使った動画をユーザーが保存出来るようになっている仕組みなんでしょう。
ひと粒で二度美味しい、ポイントの高いアイデアです。
こういう撮影技術の事をカメラの世界ではHDR(High Dynamic Range)撮影と言います。
上の海辺で飛び込む人たちの写真は一枚ですが、景色撮影などでいくつかの明るさの写真を撮影しておいて、後々合成する事によって、全ての空間の色を鮮やかに出す手法です。
こんな写真が撮れます。
この方法を使うと、1/8000の瞬間の写真を撮れなくなってしまいますけどね。
今度皆さんカメラを使う時にでも、景色の色に注意して使って欲しいんですけど、人間の目って本当に素晴らしいんです。
暗い所と青い空が同時に見えてるんですね。
これはおそらく脳が明るさを自動で補正しているから見ることの出来る景色なんだと思いますが。
大抵の場合、普通のカメラの普通の撮影法では人間の目と同じ鮮やかさを出すことは難しいです。
こんなに素晴らしい機能を生まれながらに持ち合わせている人間ってすごいですね。
それではまた。
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