こころ

3.11から7年 – 嫌われ松子の一生の中に見る自己責任という無責任

「嫌われ松子の一生」という映画を見たことがあるでしょうか。

2006年に製作されたこの映画を、私が初めて見たのは、10年くらい前だったかと思います。

映画は、ある日、ホームレスのような汚い身なりをした女が河川敷で死んでいたところを発見される、という場面からスタートします。

生前その女が住んでいた家の片付けを、女の弟が自分の息子(つまり女にとっての甥)に対して命じ、面識のなかった叔母の家の片付けをするうちに、死んだ叔母がどんな人生を送ったのかという事を知る、という大筋です。

この叔母こそが松子で、この映画の主人公なのですが、小さな間違いをきっかけにして転落人生を演じる事になります。

正直私からしてみると、松子は病的なほどに不器用な人に見えるのですが、結構世の中にこういう人は多いのではないかな、などと私は思います。逆に言うと胸を張って「自分は正常だ」と言える人がどのくらい居るでしょうか。

そういう意味で、私達はだれしも松子になりえる可能性があるのだという事を思うと、このフィクションの中の人物に、「私の代わりにそういう人生を生きてくれてありがとう」という不思議な気持ちになってしまい、気づけば涙が頬を伝っていたのでした。

昨日は3月11日、あの大災害から7年が経つようです。私は今年も、あの災害の混乱の中で報道された、ある人物の事を思い出します。

その人はほんの僅かの間出かけているうちに家が津波に破壊され、中にいたはずの家族の誰とも連絡がつかないと言っていました。

「どうしよう!私一人になっちゃうよおお!」とカメラの前で泣き叫ぶ声が今も耳の奥に残っています。

あの人が家族に再会できていますようにと毎年願うと同時に、そういう突然の不幸に見舞われた人はあの大災害に関わらずとも何人も居るのだろうなとも思います。

当たり前すぎて忘れてしまいがちですが、私達は、今朝分かれた家族と夜になればまた会えるという保証を持つことができません。

私達という存在は、一瞬一秒毎にサイコロを振っているようなものであるように思えることがあります。それ故にある時、唐突に最悪の目が出ることもあるでしょう。

そんなワケで私は不幸な境遇にある人に対して「自己責任」という言葉を投げつけるのはいかがなものかなという思いがあります。

まったく内省の意識がない人に対しては、自分の中で自分の行いを反省する事も大切だよという事を言いたくもありますが、基本的に人間は環境の生き物であるのだろうなあという事もまた強く思うのです。

理想的には個々人は自らの失敗を内省し、他人に対しては環境がそうさせたのだという優しさをもって接する事ができればなあと思いますし、将来的にAIなどが発達した時には、傷ついた人たちの心を人間以上に根気強く救う事ができる優しい機械が生まれてくれればいいなと思います。

むしろ人の心を救うためにこそAIは生まれてくれるのかも知れないな、という思いもあります。

人が人の心を救うには、人は余りにも肉体的に弱く、持てる時間が余りにも短かすぎると思います。…であるからこそ、人が人を救う話に、人は胸を打たれるのでしょう。

先日「嫌われ松子の一生」はアメリカのインターネットサイトで世界中の映画の中から「あなたが見逃したかもしれない21世紀最高の映画十傑」の一位に選ばれました。

以前に見た時はこれほど心を動かされなかったと思うのですが、10年の月日が私の心の中に松子への共感を育てたようです。今見ても役者、演出、見どころ沢山の映画ですね。

まだ見たことのない人はぜひ。

 

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