42歳のおっさん二人が、早岐駅で待ち合わせた。
友人Tに会うのは、1年ぶりだった。 待ち合わせ場所は早岐駅だったのだが、駅に向かう途中でばったり鉢合わせた。
それから2人で駅に向かい、電車に乗りこみ、ハウステンボスへ向かった。 ハウステンボスに到着すると、周りにはエヴァンゲリオンのTシャツを着たり、小物を持った人たちがちらほらいる。 ほどよく浮かれている彼らを見ながらTが言った。 「俺もなんか用意してくりゃよかったな」
そう、今日の目的はエヴァンゲリオンだった。
エヴァンゲリオンと私
中学の頃にリアルタイムで「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」を見に行った2人が今、時を超えておっさんになり、ハウステンボスにエヴァンゲリオンを見に行く。
当時はもう一人の友人Oとも一緒に映画を観に行ったことを2人して懐かしんだが、Oはすでに音信不通だ。 あの頃から今まで、それほどまでの時が経ったのだった。
テンボスの中に入ると、我々は速攻でエヴァンゲリオンのイベントをやっている建物へ向かった。 待ち時間は40分。急いでいる理由は特になかったが、待ちきれなかった我々はエクスプレスパスで入場した。 42歳にもなると待つことが上手くなりそうなものだが、むしろ先が短くなった分そうでもないのである。
イベントの詳細については、ネルフと秘密保持契約を結んだので言えない。 ただ、とても先進的な体験だった。 どの辺が先進的だったのかを書くと契約に触れるので、先進的だったということだけをお伝えしたい。 最後は尺の関係なのか、物語が若干急ぎ足で展開した。 詳しくは言えないが、だんご3兄弟を彷彿とさせる演出に、事後2人でやや苦笑した。

それから、チョコレートをモチーフにした建物へ入った。 そこで液状のチョコレートを購入。 42歳のおっさん二人が、ハウステンボスで液体のチョコレートをすする。 おっさんになってもやはりチョコレートは美味い。
次に、深海探査機へ乗り込む。 深海に取り残された仲間を助けるというミッションだった。 ストーリーの説明をしてくれるお姉さんの演技が実に真に迫っており、ここがアトラクションだということがわかっていつつも、やや不安になる。 そして探査機はボロボロになりながら、命からがら海面へ戻る。
無事に海面へたどり着いたと安堵しそうになった次の瞬間、肘置きの機械から放たれた水しぶきが顔にかかる。 これまで高水圧に耐えた探査機が海面間際でついに壊れたということだろうか。 若干の不条理を感じながら施設を出たあと、あのお姉さんは高給を受け取るに相応しいという意見がTと一致した。
観覧車にも乗った。 船にも乗った。 昔ハウステンボスでは、何か設備を利用するたびにお金を払わねばならなかったか? 今は中にさえ入れば、追加料金なしで楽しめるらしい。

ハウステンボス歌劇団
それから太鼓の演目を観た。 やっぱりライブはいいなあと思っていたところに、ハウステンボス歌劇団と出会った。 これまで歌劇を観たことがなかった我々は、 「ほう、面白いものだな」 と感心した。
どうやら、このあと大ホールでも公演が行われるらしい。 せっかくなので、それも観ようということになった。
公演までは少し時間があったので 我々はビールを飲みながら、ハウステンボスの街をぶらぶらと練り歩いた。 Tが言った。 「こりゃいいご身分だな」 たしかに、かなりいいご身分だった。 調子にのってメリー・ゴー・ラウンドに乗り込もうとしたが、係の人に 「あの飲酒をされている方はちょっと…」と止められた。 確かに、酒とメリー・ゴー・ラウンドの相性は良くないだろう気がした。

しばらく歩いていると、目の前から若い女性たちが列をなしてやってきた。 おそらく歌劇団の人たちだろう。
大ホールへ向かうと、無料席と有料席が用意されていた。 先ほど見かけた彼女たちの夕食が、少しでも豪華になればよい。 そう願って、我々は有料席のチケットを買った。

そして、いよいよ本公演が始まった。 まずホールの設備に驚いた。 各幕間ではプロジェクションマッピングで背景が飾られ、階段がきらびやかに光る。 最後は団のトップスター達が序列に合わせた大孔雀、中孔雀、小孔雀といった装いになりステージ上で踊る。 美しさや派手さ、「目立ち」は突き詰めると孔雀になるというそのセンスにはとても共感できた。
約1時間ほどの公演は、あっという間に終わった。 ホールの外へ出ると、辺りはもう暗くなっていた。
あれが歌劇なんかな
駅へ向かう帰り道、Tがつぶやくように言った。 「歌劇って初めてみたけど、あれが歌劇なんかな」 私は、その疑問にすぐに答えることができなかった。 これまで、私自身も歌劇を観たことがなかったからだ。 しかし、歌劇団の公演を観たのだから、あれはきっと歌劇に違いあるまい。 そう言うとTは 「そうだよな」 と嬉しそうに笑った。

帰りは、Tが実家の近くにある「シヴァ」というインドカレー屋へ案内してくれた。 そこのチーズナンが美味いらしい。 食ってみると、実に美味かった。 我が故郷に歌劇団が存在することの誇りを噛み締めながら、チーズナンでビールを煽り、夜は更けたのだった。
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