エッセイ

死について

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ひところ、今現在生きている人間の数はこれまでに死んだ人たちの数よりも多いなんていう話がまことしやかに流れていましたが、実はちょっと違うらしく、だいたいのべ160億人くらいが、これまで死んだのではないかと計算されているようです。

160億通りの人生、その重みを考えると気が遠くなりますが、思いを馳せれば確かに、その人達は両親から生まれて、友達を作って、恋をして、結婚したり、子供を作ったりして生きて、戦争や、事故や病気あるいは老衰の内に死んで行ったわけです。
 
 
 
 
 
僕が中学生の頃に兄が白血病にかかりました。兄が生き残るためには骨髄を提供するドナーが必要で、運良く、僕がドナーとして適合できたのでした。

骨髄の移植ドナーは患者の家族であっても、その適合率25%程度らしく、僕達家族は本当にラッキーだったのでした。

移植手術の日がやってきて、僕は始めて全身麻酔を受ける事になりました。

僕は当日朝から燃えていました。

全身麻酔がなんぼのもんじゃいと。

最後まで麻酔に抗ってやるぜ!

という気持ちで手術に挑みました。

しかし結果は・・・。

 
 

看護師さんが僕の口のところにマスクをあてがって「◯◯ミリはいりまーす。」という声を発したかと思ったその瞬間、記憶は途絶えます。

そしてわずかに意識が戻ったのは、全身麻酔を受けてどのくらい経ったころでしょうか。

「これ脱がしてもいいですかね?」と、裸の上に着せられていた手術用のガウンのような服を脱がされ始めたのがわかりました。

思春期まっただ中の僕は、それがとても恥ずかしかったのですが、体はまったく動かず、聴覚だけがおぼろげに機能していたのを覚えています。

うすれゆく意識の中で僕は思いました。

「これが、まな板の上の鯉ってやつか…!」

意識のない人に「たくさん声をかけて上げて」と言われた経験のある人も多いと思います。あれはたぶん、本当にその人の耳に届いているのだと思います。

さて、その後は完全に意識を失くしてしまい、次に目が覚めたのはベッドの上でした。

背中には術後の痛みが走り、下腹部にはおしっこ用のカテーテルが通してあり、あれは夢じゃなかったという事と、こんなにエライ事されてるのに全く気づかなかった事に驚きました。

全身麻酔が効いている間、僕はなんの痛みも感じず、夢も見ていませんでした。

あれが死ぬ事と似ているものなのかどうかは、本当に死んでみないとわかりませんが、僕の人生の中で一番「死」に近かった体験でした。

「無」になるという事はそんなに怖いものではないのだな。と感じた事を覚えています。

この様な経験をへて僕は幸い、大好きな兄を失わずにすみました。

 

  
 
 
 

死は、これまでおよそ160億人もの人々が経験したもの。

一人ひとりが必ず、生きとし生けるものが必ず経験するレア度ゼロのイベントです。

それがそんなに辛いものなはずがあるでしょうか。

生まれてきた時にせまい産道を命がけで通ってきた事を覚えてないくらい、僕らたぶん死ぬときはナチュラルに無痛で逝くのではないのかなあと想像しています。
 
たぶん、死ぬというのは、そう悪いものではないと思うのです。

僕は死ぬのも楽しみだと、最近は思っています。

それはもちろん、生きられるだけ精一杯、全身全霊で生きた後の楽しみです。
 
本日もG線上のきりんにおこしいただきありがとうございます。
 
 
 
 
「死」についてあまり良いイメージがないのか、普段は無意識の内にそこを見ないようにする事もあると思いますが、まっすぐに見つめてみれば、いつか死ぬという事はもっと崇高で美しいものの様に感じます。

そうある様に今を生きるという意味で。

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それではまた〜♪

##追記
やっぱりこんなに簡単な事ではないかも知れないと思って追記と訂正をしました。

死について、訂正と追記

 

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